🐶ルクセンブルクの単独親権違憲決定(日本語訳)

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法令集

A-第197号                            2008年12月22日

目次

憲法院決定

決定:第47/08号 2008年12月12日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.2618



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憲法院決定

2008年12月12日

父母による共通の子に関する親権の共同行使の付与を目的とする、
Aに居住のX氏を
Bに居住のY夫人に
対抗させる係争の一環として、審査機関を憲法院に指定する 1997年7月27日法第6条に基づいて先決決定に関わる請求を対象として有し、2008年4月16日決定、登録番号第31924号、に基づいて控訴院第一法廷に提起され、2008年4月16日、憲法院の書記に送達された
記録簿第00047事件において、

院は
裁判長 マリー=ポール・エンジェル女史
裁判官 レア・ムゼル女史
裁判官 アンドレ・ワンツ女史
裁判官 エドモン・ジェラール氏
裁判官 フランシス・デラポルト氏
書記  リリー・ワムパック女史
によって構成

指定司法官の報告に基づき、
当事者らが2008年10月24日の公判廷に代理を設けなかったので、
父母による共通の子に関する親権の共同行使の付与を目的とする、X氏の請求による、X氏とY夫人の離婚に付随する措置の取り決めの一環として付託された控訴院が憲法院にて、以下が先決問題、
 
1)民法第302条第1段落と第378条第1段落は、これらの条項が原則として、離婚の場合、両親の一人に親権の単独行使を付与し、また、従って、監督権と訪問権を保留して、他方の親を親権の行使から排除することについて、憲法第10条の2に適合するか否か?
2)民法第302条第1段落と第378条第1段落は、離婚の場合、法は親権の共同行使が子の利益によって正当化されていたのであれば、共同親権を維持または設定する可能性を何ら予見しておらず、これらの条項が原則として親権の単独行使を両親の一人に付与している一方で、民法第380条は、両親によって認知された非嫡出子の場合、両親が同居しているか別居しているかに関わらず、婚外の共同親権の設定を予見しているのであって、憲法第10条の2に適合するか否か?
を委託したことを考慮
第Ⅳ章「離婚の影響」の下で示されている民法第302条第1段落が、「親権は第278条と第389条に適合して行使されるものであって、離婚の裁定を下す裁判所は子の保護を、子の利益が要求するであろうことに従って、あるいは夫婦の一方または他方に、あるいは親族であるか否かに関わりなく第三者に委ねることになる」と規定していることを、
第1章「子の人権に関する離婚について」の下で示されている民法第378条第1段落の表現において、「父と母が離婚または別居した場合、親権は裁判所が子の保護を委ねた二人のうちの一方によって、他方の訪問権と監督権を保留して、行使される」ことを、
第二先決問題の用語のなかで控訴院によって適用された民法第380条が非嫡出子の両親に、二人が後見人判事を前にして合同の宣言をなすのであれば、二人によって認知された非嫡出子についての親権を共同で行使することを可能にし、また、父、母、または社会権保護省の請求により、非嫡出子に対する親権が父と母によって共同で行使されることを決定する可能性を後見人判事に委ねていることを考慮

憲法第10条の2(1)が「ルクセンブルク人は法の下で平等である」と言明していることを考慮し、
立法者は、設定される差別が客観的不平等に由来するという条件で、その差別が合理的に正当化され、適切であり、目的に釣り合っているとの条件で、平等の憲法的原則を犯すことなく、いくつかの人的カテゴリーを異なる法制度の下に置くことができることを考慮する、

Ⅰ.共通の子に対する単独親権を行使する離婚した親と親権を剥奪された親が客観的に異なる状況にあること

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それにもかかわらず、離婚した父と母がその共通の子に対して同一の親子関係を有しているとして、二つのカテゴリーが比較可能であることを考慮し、
憲法第10条の2(1)のなかで適用された平等概念は検討に付される権利と義務の内容および存在理由を参照して理解されなければならないことを、親権は子をその安全、健康、道徳性において保護するために設定されていることを、父と母は子に対して保護、監督、教育の権利と義務を有していること
子に対するそれぞれの関係に関する両親の平等の評価は子の利益を考慮してなされなければないことを考慮し、
一般的な規則として、親権はその両親によって行使され、父または母によって単独で行使されるのではないことは子の利益に即してであることを、
その結果、民法第302条第一段落および第378条第一段落に制定されているように保護権を付与されていない親の監督権および訪問権を保留して、父または母による離婚後の親権の単独行使の原則は合理的に正当化されなくなることを、
憲法第10条の2(1)の平等概念は、子との関係における両親の平等がルクセンブルク大公国によって承認された国際規約により是認されているが故に、なおさら上記に留意された意味に沿って解釈されなければならないことを、
1989年11月20日の国連総会で採択され、1993年12月20日の法によって承認された子供の権利条約に基づけば、その第18条第1文で、「当事者国は、子を養育し、その発育を保証することにおいて両親が共通の責任を有しているとの原則の承認を保証すべく最善を尽くす」ことを、締約国に課せられたこの義務は両親が結婚しているか離婚しているか、共同生活しているか別居生活しているかによって区別してはならないことを、
1984年11月22日、ストラスブールで作成され、1989年2月27日法で承認された人権と基本的自由の保護の条約の第7議定書は第5条第1文で、「夫婦は、結婚期間において、またその解消時において、結婚の観点で夫婦相互に、また、子との関係で市民的性格の権利と責任の平等を享受する」と規定していることを考慮する

Ⅱ.結婚し、別居していない両親は子に対する親権を共同で行使することを考慮し、
民法第380条は非嫡出子の両親に、彼らが後見人判事の前で合同宣言をすれば、父と母によって認知された非嫡出子に対する親権を共同で行使することを可能にすることを、また、判事は両親の一人または社会権保護省の請求により、非嫡出子に対する親権は、両親が一緒に生活していようと別居していようと、子を認知した結婚していない両親によって共同で行使されると決定できることを考慮、
夫婦の決定的原因による離婚または別居の場合、両親のただ一人が共通の子の保護の被付与者であることを、この付与は民法第378条第1段落に基づいて子の人格に関して親権の単独行使と、判事の相反する規定がなければ、子の財産の法律上の管理とを含むが故に、
親の異なるカテゴリー、結婚、離婚、別居している親、結婚することのなかった親等のカテゴリー間で客観的不平等が存在していることを考慮、
結婚で生まれた子の親は、よしんば彼らが結婚し、離婚し、または別居していようと、共通の子に対して同一の親子関係にあることを、結婚し、離婚し、または別居していようと、彼らが彼らの認知した共通の子に関して結婚しなかった親と同一の、子に対する親子関係にあることを、
人的カテゴリーすなわち、結婚、離婚、または別居している親と結婚しなかった親は、共通の子に対して同一の親子関係によって比較可能であることを考慮、
一方で、よしんば離婚が夫と妻を結合する法的結婚を解消するとしても、離婚は離婚した父と母の親である役割を終わりにするものでないことを、
結婚したが、事実上離別した親は共通の子に対して一緒に親権を行使し続けることを考慮し、
他方で、共通の子に対する離婚または別居した両親による親権の共同行使を設定する不可能性を正当化する決定的な理由は存在していないにも関わらず、法は、両親が一緒に暮らしていようと別れて生活していようと、いわゆる私生児(非嫡出子)を認知した結婚していない両親にそうした設定を可能にしていることを、
従って、離婚または別居した両親の状況と結婚している両親の状況との親権の行使に関する差別は、共通の子の離婚または別居した両親の状況といわゆる私生児(非嫡出子)を認知した両親の状況との間の差別と同じように、これもまた合理的に正当化されないことを考慮する

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Ⅲ.最後に、両親が認知したいわゆる私生児(非嫡出子)の両親による親権の共同行使を許容しつつ、他方で結婚で生まれた子は離婚した両親による親権の共同行使を享受できないのであって、民法第302条第1段落と第378条第1段落は、結婚で生まれた子の状況と婚外で生まれた子との間に合理的に正当化されない差別化を生み出していることを、
そうした考慮の帰結として、民法第302条第1段落と第378条第1段落は、その条文が共通の子に対する親権の離婚した両親による共同行使を許容していない限りにおいて、憲法第10条の2(1)に適合しないことを考慮して
当決定を下す。
上述の理由によって、
民法第302条第1段落と第378条第1段落は、その条文が共通の子に対する親権の離婚した両親による共同行使を許容していない限りにおいて、憲法第10条の2(1)に適合しないことを示し、
当言い渡しから30日内に判決が法令集「メモリアル」に公表されるように命じ、
「メモリアル」への判決の公表時にX氏とY夫人の氏名を捨象するように命じ、
当判決の送付は提訴がそこから発出した控訴院第1法廷に憲法院の書記によって行われるように、また、原本が当裁判所の関係当事者に送達されるように命じる。
憲法院裁判長により公判廷で言い渡され、冒頭と同じ日付を記入する。
 
裁判長
エンジェル
書記
ワムパック 

原本と相違なきを証明する。
ルクセンブルク、2008年12月12日
憲法院書記
リリー・ワムパック



発行:法律センターサービス L-2450ルクセンブルク F.D.ルーズベルト通43
印刷:センター印刷所臨時協会 ヴィクトール・バック