🐶原告(X) 控訴理由書2
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令和3年(ネ)第1297号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 (閲覧制限)
被控訴人 国
令和3年7月1日
控 訴 理 由 書 2
東京高等裁判所 御中
控訴人訴訟代理人弁護士 作花知志
第1 控訴人の主張
1 原判決は,24-25頁において,以下のとおり判示した。
「このような親権についての各規定の在り方をみると,親権者たる親は,子について,当該子にとって何が適切な監護及び教育であるか,親権を行うに当たって考慮すべき「子の利益」が何かを判断するための第一次的な裁量権限及びそれに基づく決定権限を有するが,これらの権限は,子との間でのみ行使され,親とは別人格の子の自律的意思決定に対して一定の制約をもたらし得る形で行使されるものであるばかりか,その権限の行使に当たっては,「子の利益」のために行使しなければならないという制約があり,それが親自身の監護及び教育の義務にもなっている。そうすると,親権は,あくまでも子のための利他的な権限であり,その行使をするか否かについての自由がない特殊な地位であるといわざるを得ず,憲法が定める他の人権,とりわけいわゆる精神的自由権とは本質を異にするというべきである。また,親権を,その行使を受ける子の側から検討をしても,子は,親権の法的性質をどのように考えようとも,親による親権の行使に対する受け手の側にとどまらざるを得ず,憲法上はもちろん,民法上も,子が親に対し,具体的にいかなる権利を有するかも詳らかでないから,子において,原告が主張するような,父母の共同親権の下で養育される権利,ひいては成人するまで父母と同様に触れ合いながら精神的に成長をする権利を有するものとは解されず,親権の特殊性についての上記判断を左右するものではない。そうすると,このような特質を有する親権が,憲法13条で保障されていると解することは甚だ困難である。」
2 しかしながら,例えばフランスでは,フランス民法典の1993年改正によって両親の共同親権が原則となり,更に2002年改正により,別居・離婚が親権の態様に影響を及ぼさないことが確認された。そして,親権は,「子の利益を目的とする権利と義務の総体である。」と規定されている(「国立国会図書館 離婚後面会交流及び養育費に係る法制度―米・英・仏・独・韓国―」5-6頁の「1 親権」(甲60))。
すると,原判決が判示したように,「その権限の行使に当たっては,「子の利益」のために行使しなければならないという制約があり,それが親自身の監護及び教育の義務にもなっている。」ことが,親権の権利性を否定したり,親権が基本的人権であることを否定する理由にならないことは明白である。
3 最高裁大法廷平成27年12月16日判決(女性の再婚禁止期間違憲判決)は,以下のように判示して,諸外国での立法が,日本国憲法に影響を与える立法事実であることを認めている。すると,上で引用したように,フランスでは,フランス民法典の1993年改正によって両親の共同親権が原則となり,更に,親権は,「子の利益を目的とする権利と義務の総体である。」と規定されていることが(「国立国会図書館 離婚後面会交流及び養育費に係る法制度―米・英・仏・独・韓国―」5-6頁の「1 親権」(甲60)),日本国憲法の解釈に影響を与える立法事実であることは明白である。
「また,かつては再婚禁止期間を定めていた諸外国が徐々にこれを廃止する立法をする傾向にあり,ドイツにおいては1998年(平成10年)施行の「親子法改革法」により,フランスにおいては2005年(平成17年)施行の「離婚に関する2004年5月26日の法律」により,いずれも再婚禁止期間の制度を廃止するに至っており,世界的には再婚禁止期間を設けない国が多くなっていることも公知の事実である。それぞれの国において婚姻の解消や父子関係の確定等に係る制度が異なるものである以上,その一部である再婚禁止期間に係る諸外国の立法の動向は,我が国における再婚禁止期間の制度の評価に直ちに影響を及ぼすものとはいえないが,再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっていることを示す事情の一つとなり得るものである。」
4 以上により,原判決の判示は正当ではなく,日本の民法において,親権が「その権限の行使に当たっては,「子の利益」のために行使しなければならないという制約があり,それが親自身の監護及び教育の義務にもなっている。」ことは,フランス民法典において,親権は,「子の利益を目的とする権利と義務の総体である。」とされていることと同一の性質を有することの現れであると解釈されなければならないことは明白である。
その結果,親権の複合的な性質は,日本国憲法においても,親権が憲法13条等により保障される基本的人権であることを否定する理由にならないことは明白である。
そして,控訴人が既に主張したとおり,日本国憲法においても,親権が憲法13条等により保障される基本的人権であることは明白である。
以上